工場の差圧を見える化して、空調の無駄を解決する

「空調を強くしても現場が暑い・寒い」「電気代が下がらない」「扉が重くて開かない」。工場でこの 3 つが同時に起きているとき、原因は空調機の能力ではなく 差圧(建屋の中と外の圧力差)です。集塵機や局所排気が吸い出す量に給気が追いつかず、建屋が負圧になって、空調した空気が捨てられ、代わりに未処理の外気が隙間から入り続けています。このページは、その差圧を測って見える化し、見えたあとに何をすれば解決するかまでをまとめたものです。

図の数値は想定値
無料Step 1 は現状の切り分けから。微差圧計でのスポット測定と空気バランスの確認までは費用をいただきません。ここで「連続計測が必要か」がはっきりします。はじめ方を見る

工場の空調の無駄は、差圧から起きている

まず仕組みから

工場には、集塵機・溶接ヒューム排気・塗装ブース・ガス乾燥機・厨房など、外へ吸い出す設備がたくさんあります。吸い出した分と同じ量の空気は、必ずどこかから入ってきます。給気ファンで計画的に入れていなければ、入り口になるのは搬入口・シャッター・扉・建具の隙間です。つまり空調した空気を排気で捨てて、その穴埋めに未処理の外気を吸い込んでいる状態になります。これがインフィルトレーション(すきま風による熱損失)で、工場の空調の無駄のいちばん大きな部分です。

排気 集塵機 空調機 搬入口(開放) 未処理の外気 建具の隙間 ΔP −25 Pa 建屋のなかが外より低い=負圧
排気が給気を上回ると建屋は負圧になり、開口と隙間から未処理の外気が入り続けます(イラスト・数値は想定値)
1

負圧:空調した空気を捨てて、外気を吸い込む

排気した分だけ外気が隙間から入ります。夏は高温多湿、冬は冷気がそのまま現場に届くので、空調を強くしても追いつきません。

無駄の出方 排気風量 × 内外の温度・湿度差ぶんの熱が、毎時間ずっと捨てられ続けます。

2

正圧にしすぎ:空調した空気が漏れ出ていく

給気を足しすぎて強い正圧になると、今度は空調した空気が隙間から外へ逃げます。扉が閉まらない、風切り音が鳴るのもこの状態です。

無駄の出方 負圧と同じだけ熱が逃げます。差圧は「ゼロ」ではなく軽い正圧が狙いです。

3

圧力勾配を守るための過剰換気

清浄区と汚染区、乾燥室、塗装室の圧力の向きを崩したくないので、とりあえず換気量を多めに固定している現場が多くあります。

無駄の出方 必要な勾配は数 Pa です。測っていないと「多めに回す」以外の選択肢が持てません。

この症状が出ていたら、差圧が原因です

現場で先に出るサイン

差圧は目に見えないので、顧客側は「空調の問題」「建物が古い」と受け取っていることが多いです。下のうち 2 つ以上当てはまれば、測る価値があります。

  • 扉が重い・開けにくい/自動扉が閉まりきらない
  • 扉や窓の隙間で風切り音・笛のような音がする
  • 冬に足元だけ極端に寒いというクレームが出る
  • 夏に設定温度まで下がらない・湿気が抜けない
  • 粉じん・虫・外の匂いが入ってくる
  • 壁際・シャッター際で結露が出る
  • 空調機のフィルタがすぐ目詰まりする
  • 排気設備を止めると急に空調が効き出す

燃焼機器がある区画は、安全の問題になります

ガスボイラー・重油バーナー・ガス乾燥機・給湯器がある区画が負圧になると、排気が煙突から逆流する(逆ドラフト)ことがあります。不完全燃焼と一酸化炭素につながるため、この場合の差圧は省エネではなく安全の確認項目です。該当する設備があるときは、現地確認で必ず先に見ます。

差圧の見える化:測る構成

配線は盤の近くだけ

差圧そのものは専用の微差圧トランスミッタで測り、その信号を Milesight UC300 が LoRaWAN に載せて、ゲートウェイ経由でダッシュボードに集めます。差圧トランスミッタは 4-20 mA または Modbus 出力の産業用センサーで、UC300 はそれを無線化するための I/O コントローラです。既設の空調・BA・排気設備には手を入れません(測るだけの段階では一切触りません)。

屋内側の取り出し 壁・天井に細管 1 本 屋外側の取り出し 静圧プローブで取る 微差圧トランスミッタ レンジ ±50 Pa・オートゼロ 出力 4-20 mA / Modbus 4-20 mA Milesight UC300 アナログ/Modbus を無線化 LoRaWAN Milesight UG65 ゲートウェイ 1 台 ダッシュボード
差圧の計測構成。屋外側の取り出しを静圧プローブにするのが要点です(風圧が乗ると数値が信用できなくなります)
屋内外の差圧微差圧トランスミッタ(レンジ ±50 Pa 程度・オートゼロ機能つき)+ Milesight UC300。建屋の代表点に 1〜2 か所
ゾーン間の差圧同じ構成をゾーンの境界ごとに。清浄区・乾燥室・塗装室の圧力勾配を監視する場合に追加します
フィルタの前後差圧レンジの大きい差圧トランスミッタ。目詰まりによる搬送動力の増加を予兆として見ます
温湿度(屋内・屋外)Milesight EM300-TH × 4〜6(侵入口の近く、作業高さ、天井付近、屋外)。電池式・配線工事なし
搬入口・扉の開閉Milesight EM300-MCS(磁気接点)。開放していた時間と差圧の関係を突き合わせます
排気ファン・空調の電流Milesight CT305 / CT303。どの設備が動いたときに負圧になるかを特定します
外気の条件気象 API(気温・湿度・風向風速)。風の強い日の変動を切り分けるために使います
ゲートウェイMilesight UG65 × 1(LoRaWAN、LTE または有線)。台数は建屋の構造と距離で変わります
工事差圧トランスミッタと UC300 は電源と信号線が必要なので、盤の近くで電気工事士が施工します(2 点で半日程度)。温湿度・扉センサーは電池式で配線工事なし
見え始めるまで設置当日から数値。時間帯ごとの傾向は 1〜2 週間、外気温との相関は 1 か月ほどで安定します

気圧センサー(絶対圧)の差分では測れません

環境センサーに内蔵されている気圧センサーは、精度 ±0.5 hPa(=±50 Pa)・分解能 0.1 hPa(=10 Pa 刻み)が一般的です。工場で見たい差圧は 5〜50 Pa なので、見たい信号が精度と同じか小さくなります。さらに絶対気圧は天候で 1 時間に 100 Pa ほど動くため、屋内外の 2 台を別々の周期で送らせると、送信タイミングのずれがそのまま数十 Pa の誤差になります。差圧は専用の微差圧トランスミッタで測ります。

見える化したあとに読む 4 つの数字

差圧は「平均」では意味が出ません
目標帯 +5〜+20 Pa(軽い正圧) +20+100 -10-20-30-40 差圧 Pa 0:004:008:00 12:0016:0020:0024:00 局所排気 ON搬入シャッター開放排気 OFF 最大 −34 Pa
差圧の 1 日(想定値)。どの設備が動いた時に、どれだけ負圧になるかが読めるようになります
1

負圧になっている時間率

−10 Pa を下回っていた時間が 1 日のどれだけを占めるか。平均値ではなくこの割合で見ます。対策の優先順位と、対策後の効果判定はどちらもこの数字で行います。

2

差圧 × 内外の温度差

同じ −20 Pa でも、真夏と真冬ほど失う熱は大きくなります。差圧と温度差を掛け合わせて、季節ごとの損失の重みを出します。金額換算の素になる数字です。

3

開口・扉の開放時間との相関

搬入口やシャッターを開けている時間と、差圧の悪化を突き合わせます。「開放時間を短くする」という運用ルールの効果を、感覚ではなく数字で確認できます。

4

フィルタ前後の差圧

目詰まりが進むとフィルタの前後差圧が上がり、ファンの搬送動力が増えます。この上がり方を追うことで、交換時期を決め打ちではなく状態で判断できます。

差圧は 1 日のなかで大きく動くので、平均値では判断できません。「いつ・どの設備が動いたときに・どれだけ負圧になったか」を時系列で押さえることが、対策を決める条件になります。表示の数値は想定値です。

無駄を金額に換算する

投資判断に必要なのはこの一歩

差圧と開口の大きさが分かれば、隙間から入ってくる風量と、それを空調が処理するための熱量を概算できます。見える化の目的はグラフを見ることではなく、年間いくら捨てているかを言えるようにすることです。

侵入風量 Q ≒ C × A × √(2 × ΔP ÷ ρ) / 顕熱の損失 ≒ 1.2 × Q × ΔT
相当開口面積 A0.5 m2(搬入口の隙間と建具の合計と仮定)
差圧 ΔP20 Pa(負圧)
内外の温度差 ΔT10 K
侵入風量 Q約 1.7 m3/s(= 約 6,200 m3/h)
顕熱の損失約 20 kW
電力に換算約 7 kW(COP 3 として)
年間の電気代約 35 万円(年 2,000 時間・25 円/kWh として)

⚠ 上の数字は前提を仮に置いた計算例です。実際には現地で測った差圧・開口・運転時間に置き換えます。また夏は湿気を取るための潜熱が上に乗るため、空調負荷はこれより大きくなります。

見えたあとのアクション:解決は 5 段階

投資の小さい順に進めます

差圧が見えると、やることの順番がはっきりします。いきなり設備投資には進みません。まず運用と気密で取れるところを取り、それでも残る分を給気バランスとファン制御で解決し、どうしても必要な換気量の熱だけ回収する——この順番がいちばん費用対効果が高いです。各段階の効果は、同じダッシュボードの差圧で前後比較して確認します。

段階やること費用の目安差圧での確認方法
1運用の見直し局所排気と集塵機を必要なときだけ運転する(設備の稼働とインターロックを取る)。搬入口の開放時間のルールを決める。空調と換気のスケジュールを合わせるほぼ 0 円排気の運転時間が減った分、負圧の時間率が下がる
2気密の改善搬入口のドックシール、エアカーテンの吹き出し方向と風速の見直し、建具の調整、隙間の塞ぎ、風除室(二重扉)の設置低額同じ排気量でも負圧が浅くなる(= 開口が小さくなった証拠)
3給気のバランシング給気ファンを足す・風量を調整して、建屋を軽い正圧(+5〜+20 Pa)に持っていく。ゾーンごとの圧力勾配を設計して割り付ける中目標帯に入っている時間率で評価する
4ファンの差圧制御給気・排気ファンをインバータ化し、差圧を一定に保つフィードバック制御にする。ダクト静圧の設定値を見直す(静圧リセット)。集塵機のダンパと連動させる中〜高外気条件や扉の開閉が変わっても目標帯から外れない
5熱回収法令・工程上どうしても必要な換気量について、全熱交換器などで排気の熱を回収する高残った換気量 × 温度差から、回収できた熱量を算定する

排気量を一律に下げる、という解決はしません

有機溶剤・粉じん・特定化学物質を扱う局所排気装置には、法令で定められた制御風速があります(有機溶剤中毒予防規則・粉じん障害防止規則など)。省エネのために排気を絞るのは、作業者の安全衛生を後退させる行為です。このページの 5 段階はすべて「必要な排気量は確保したまま、負圧と熱損失を解消する」方法で組んでいます。

そのほか、現場で外しやすい点

・屋外側の取り出し口を風が直接当たる場所に付けると、風圧が差圧として出てしまいます(静圧プローブで取ります)。
・レンジを大きく取りすぎると分解能が足りません。建屋の差圧は ±50 Pa 程度のレンジで測ります。
・微差圧センサーはゼロ点のドリフトが効くため、オートゼロ機能のある機種を選びます。

進め方(3 ステップ)

Step 1 で「連続計測が必要か」が分かります
STEP 1 · 無料現地を 1 日見せていただきます。ハンディ微差圧計で屋内外とゾーン間をスポット測定(朝・昼・夜、排気の ON / OFF)し、給排気の設計風量と実測を並べた空気バランス表を作り、発煙で侵入箇所を可視化します。ここで数字が出なければ、連続計測は必要ありません。
STEP 2 · 基本無料差圧の時間変化が効くと分かった場合に、差圧トランスミッタ・温湿度・扉の開閉・電流を 1〜2 か月つないで連続計測します。機器は貸出です。この期間の実データで、年間の損失額を算定します。
STEP 3 · 有料5 段階のうち、どこまでやるかを一緒に決めます。工事が必要な範囲の設計・施工と、対策後の差圧の継続監視(逸脱アラート・フィルタ差圧の予兆保全)までお引き受けします。

よくある質問

工場の差圧について
差圧はどのくらいの範囲を測るのですか

工場の負圧は −5〜−50 Pa に収まることが多く、目標にするのは +5〜+20 Pa の軽い正圧です。そのため ±50 Pa 程度のレンジの微差圧トランスミッタを使います。クリーンルームのゾーン間管理では、さらに細かいレンジを選ぶこともあります。

既存の空調や中央監視(BA)に手を入れる必要はありますか

測って見える化する段階では必要ありません。差圧トランスミッタと UC300 を独立して設置し、既設の設備には触りません。手を入れるのは、5 段階のうち「ファンの差圧制御」まで進めると決めた場合だけです。

配線工事は必要ですか

差圧トランスミッタと UC300 は電源と信号線が必要なので、盤の近くで電気工事士が施工します(2 点で半日程度)。温湿度センサーと扉の開閉センサーは電池式で、両面テープかネジ留めだけです。

排気を減らせば解決しますか

いいえ。局所排気装置には法令で定められた制御風速があり、省エネのために一律に絞ることはできません。解決は「必要なときだけ運転する」「給気を足して負圧を解消する」「気密を上げる」「どうしても必要な換気量の熱を回収する」の順で行います。

環境センサーに入っている気圧センサーで代用できませんか

できません。一般的な気圧センサーは精度 ±0.5 hPa(±50 Pa)・分解能 0.1 hPa(10 Pa 刻み)で、見たい差圧 5〜50 Pa と同じ桁です。さらに絶対気圧は天候で 1 時間に 100 Pa ほど動くため、屋内外 2 台の送信タイミングのずれが誤差になります。差圧は専用の微差圧トランスミッタで測ります。

どのくらいで効果が分かりますか

スポット測定は現地で当日わかります。連続計測では、時間帯ごとの傾向が 1〜2 週間、外気温との相関と年間の損失額の算定が 1 か月ほどで安定します。運用の見直し(第 1 段階)の効果は、実施した翌日から差圧の時間率で確認できます。

クリーンルームや食品工場の圧力管理にも使えますか

使えます。清浄区から汚染区へ向かう圧力勾配を各ゾーンの境界で測り、勾配が崩れたときにアラートを出す構成にします。品質側の要求を満たしながら、過剰換気になっている分を削るのが狙いです。

全国どこでも対応できますか

対応します。センサーとゲートウェイの設置は現地で行いますが、ダッシュボードは遠隔で構築・運用します。遠方の場合の出張費は事前にお伝えし、了承いただいてから進めます。

まず、御社の工場の差圧を測りませんか

建屋の規模、排気設備の種類と台数、空調の方式を教えていただければ、測点の置き方と機器構成をお出しします。現地でのスポット測定と空気バランスの確認(Step 1)は無料です。

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