工場の困りごとを、IoT センサーで見える化する
工場の無駄は、見えていないから残っています。無人の時間にコンプレッサーが回り続けている、集塵機の吸い込みが落ちている、ラインが 1 日に何回止まったか誰も知らない。どれも「測っていないから分からない」だけで、センサーを後付けして数字にすれば、その日から判断できます。このページでは、工場で実際にご相談の多い困りごとを 11 件挙げ、何を測ると何が見えて、見えたあとに何をすれば解決するかまでをまとめました。
見える化の形は、どの困りごとでも同じです
測る → 送る → 見える → 手を打つどの困りごとでも、やることは同じ 4 段です。センサーを後付けして測り、ゲートウェイ 1 台で無線でまとめ、ダッシュボードで見えるようにし、見えた数字で手を打つ。既設の設備・制御盤・中央監視には手を入れません(測る段階では一切触りません)。2 件目以降の困りごとは、同じゲートウェイと同じ画面にセンサーを足すだけなので、基盤への投資は 1 回で済みます。
どれから手を付けるか
決裁が通りやすい順に 3 分類工場の見える化は「できること」を並べても決まりません。社内で稟議が通る理由の強さで並べたほうが早いので、当社では次の 3 分類で順番を決めています。A は法令や安全衛生が後押しするのでやらない選択肢がなく、B は金額で説明でき、C は止まったときの損失で説明できます。
A法令・安全が後押しするB金額が大きく、計算が立つC止まると痛い・品質を落とす
| 分類 | 困りごと | 測るもの | 見えると何が決まるか |
|---|---|---|---|
| A | 暑熱環境(熱中症) | WBGT(黒球つき)・温湿度 | 作業の中断・休憩・冷却機器の置き場と、法令対応の記録 |
| A | 集塵機・局所排気のフィルタ目詰まり | フィルタ前後の差圧・ファン電流 | フィルタ交換の時期(早すぎ=費用、遅すぎ=能力低下) |
| A | 敷地境界の騒音 | 騒音レベル(時刻つき) | どの設備・どの時間帯が原因か。近隣対応の記録 |
| B | 圧縮空気のエア漏れ・無負荷運転 | コンプレッサー電力・タンク圧力 | 漏れの金額と、締め直し・圧力設定・台数制御の効果 |
| B | デマンドと工程別の原単位 | 系統別の電流・ガス/水のパルス | 契約電力の引き下げ余地と、製品あたりのエネルギー費 |
| B | 熱源の温度差(チラー・熱交換器) | 配管の表面温度 2 点・ポンプ電流 | 更新が必要か、洗浄・調整で足りるか |
| B | 蒸気トラップ不良・保温の欠損 | トラップ前後の表面温度 | 吹き抜けているトラップの特定と交換の優先順位 |
| C | 設備のチョコ停・稼働率 | 主軸電流・信号灯/接点 | 生産が計画どおり出ない理由の内訳 |
| C | 温度・湿度の逸脱(炉・恒温倉庫・薬液) | 温度(高温・液中)・温湿度 | 巡回記録の廃止と、不良との相関 |
| C | 漏水・油漏れ | スポット漏水センサー | 夜間・休日の被害の早期発見 |
| C | タンク・サイロの残量 | 超音波の距離 | 欠品による停止の回避と、測りに行く作業の廃止 |
このほか、建屋の差圧(負圧)による空調の無駄は単独で大きいテーマなので、別ページにまとめています → 工場の差圧と空調の無駄
B · 本命圧縮空気のエア漏れと無負荷運転
金額がいちばん大きく、現調がいちばん軽い「休日や夜間に、誰もいないのにコンプレッサーが回っている」「吐出圧を下げると現場から苦情が出るので下げられない」— この 2 つが出たら、ほぼ漏れています。
圧縮空気は工場の中でもっとも単価の高いエネルギーです。コンプレッサーは工場全体の消費電力の 10〜30%(製造業では 20〜25% とされます)を占め、そのうち 20% 前後が漏れで失われていると言われています。やりにくいのは、漏れが「どこかで少しずつ」起きるため、音でも請求書でも分からないことです。
ところが見える化そのものは、この困りごとがいちばん簡単です。誰も空気を使っていない時間の消費電力を測れば、それがほぼ全部漏れだからです。コンプレッサーの電力を 1 分値で記録し、無人の時間帯だけを切り出せば、その日のうちに金額が出ます。
- CT101 / CT103(単相)
- CT303 / CT310(三相)
- 圧力トランスミッタ + UC300
- UG65(ゲートウェイ)
例: 10.3 kW × 3,600 h(夜間・休日)× 25 円 ≈ 年 93 万円。実際の単価と無人時間はお客様の値で計算します。
比率の出典: 中小機構 J-Net21「省エネ Q&A」、長野県工業技術総合センター技術情報、SMC「圧縮空気の省エネ」。数値は一般的な目安で、設備構成によって変わります。
A · 法令暑熱環境(熱中症)の WBGT
やらない選択肢がないテーマ「夏になると現場から苦情が出る」「スポットクーラーをどこに置くかが感覚で決まっている」「暑さを理由にした離職がある」
2025 年 6 月 1 日施行の改正労働安全衛生規則で、WBGT(暑さ指数)28℃以上または気温 31℃以上の作業場で、連続 1 時間以上または 1 日 4 時間を超える作業を行う場合、事業者には「早期に見つけるための報告体制」「重篤化を防ぐ手順の作成」「関係作業者への周知」が義務づけられました。罰則もあるため、測って記録が残ること自体に価値があります。
温湿度センサーだけでは WBGT になりません
WBGT は気温・湿度に加えて黒球温度(放射熱)から計算します。折板屋根からの放射や炉の輻射がある工場では、気温が同じでも WBGT は大きく変わるため、温湿度センサーの値から換算した数字を法令対応の記録に使うことはできません。黒球つきの専用計測器を使い、その出力を I/O コントローラで無線化します。温湿度センサーは「どこが暑いか」を面で見るために併用します。- 黒球つき WBGT 計 + UC300
- AM308(温湿度・CO2)
- EM300-TH / EM320-TH
- 気象 API との突合
法令の出典: 厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」(労働安全衛生規則の改正・2025 年 6 月 1 日施行)。対象作業の判定は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
同じ画面のデモ → 暑さ指数 WBGT のダッシュボード
A · 法令集塵機・局所排気のフィルタ目詰まり
省エネではなく安全衛生の話にできる「最近、吸いが悪い気がする」「粉じんが舞うようになった」「パルスジェットの作動が増えた」「ファンの音が変わった気がするが、確信がない」
粉じん障害防止規則・有機溶剤中毒予防規則には、局所排気装置の制御風速の要件があります。フィルタが目詰まりすると風量が落ち、この要件を満たせなくなります。つまりこのテーマは省エネの提案ではなく安全衛生の維持の話で、だからこそ投資判断が通りやすいという性質があります。同時にファンは過負荷になり、電流が上がります。
見るべき数字は フィルタ前後の差圧 ひとつです。同じ風量でも粉じんがたまれば差圧は上がるので、しきい値を決めれば交換時期が自動で決まります。早すぎる交換はフィルタ代の無駄、遅すぎる交換は能力低下と電力増。どちらも差圧を見れば避けられます。
- 微差圧トランスミッタ + UC300
- CT303 / CT310(ファン電流)
- EM300-DI(パルスジェットの接点)
C · 稼働設備のチョコ停と稼働率
PLC に触らず後付けできる「生産が計画どおり出ない理由を、誰も説明できない」「稼働率は日報の自己申告で管理している」「止まっているのは見れば分かるが、1 日に何回・何分かは誰も数えていない」
1 回 2〜3 分の停止は日報に載りません。しかし 1 日に 7 回あれば 20 分、月で 7 時間です。主軸の電流を 1 分より短い周期で見れば、稼働・待ち・停止は電流の形で切り分けられます。信号灯やシーケンサの接点が取れるなら、そちらを接点入力で拾うほうが正確です。
この方法の利点は、PLC やラダーに触らないことです。既設の制御には手を入れず、盤の中の電流センサーか信号灯の配線だけで済むため、情シスや設備メーカーの立ち会いが要らず、短期間で始められます。
- CT101 / CT103(単相)
- CT303(三相)
- EM300-DI(接点・パルス)
- UG65(ゲートウェイ)
同じ画面のデモ → 工場向けダッシュボード(コンプレッサーの発停検知を同じ仕組みで行っています)
B · 熱源熱源の温度差(チラー・冷却塔・熱交換器)
更新の前に測ると結論が変わる「チラーが能力不足に見える」「冷水の量を増やしても冷えない」「夏場だけ止まる」「更新の見積が出てきたが、本当に更新が必要なのか分からない」
熱交換器のスケール(水垢)、エア噛み、バイパスの開けすぎが起きると、往と還の温度差(ΔT)が設計値より小さくなります。熱が運べていないので現場は冷えませんが、ポンプは回り続けるため電力だけがかかります。これは「能力不足」に見えて、実際には洗浄・調整で直ることが多い症状です。
測るのは配管の表面温度 2 点とポンプの電流だけです。配管に巻くだけのセンサーで済むので、断水も停止も必要ありません。
- EM500-PT100(配管温度)
- CT303 / CT310(ポンプ電流)
- UG65(ゲートウェイ)
同じ画面のデモ → 空調監視のダッシュボード
そのほかの困りごと
どれも同じゲートウェイと同じ画面に乗りますBデマンドと工程別の原単位
「基本料金が下がらない」「デマンド警報が鳴るたびに手当たり次第に止めている」「製品あたりのエネルギー費が出せない」。分電盤の系統ごとに電流を測り、既存メータのパルスでガス・水も同じ画面に載せます。
見えると ピークの犯人が特定でき、契約電力の引き下げ(効果が年単位で残る)と、省エネ法の定期報告の自動化が同じデータでできます。
機器 CT303 / CT305 / CT310、EM300-DI
B蒸気トラップ不良・保温の欠損
「ドレンから蒸気が吹いている」「ボイラの燃料が落ちない」「触れないほど熱い配管がある」。トラップの前後の表面温度を測り、吹き抜けているトラップを特定します。
見えると 1 個の吹き抜けで年に数万〜数十万円。数が多いので台数効果が出ます。交換の優先順位が温度で決まります。
機器 EM500-PT100、現調はサーモグラフィ
C温度・湿度の逸脱
「巡回して紙に記録している」「夜間と休日が無記録」「不良の原因が特定できない」。電気炉・乾燥炉・恒温倉庫・めっき槽・薬液タンクの温度を自動で記録します。
見えると 巡回工数がそのまま削減になり、逸脱は即時に通知されます。ロットごとの条件突合(◯ / ×)と報告書も自動で残ります。
機器 EM500-PT100(高温・液中)、EM320-TH、EM300-TH
C漏水・油漏れ
「朝来たら床が濡れていた」「原因不明の水道代」「機械室が無人」。機械室・配管下・ピット・空調ドレンの下に、スポット型の漏水センサーを点在させます。
見えると 1 回の水没被害を回避すれば投資が終わります。検知と通知までが範囲で、止水弁の自動操作は含みません。
機器 EM300-SLD
Cタンク・サイロ・ホッパーの残量
「欠品で生産が止まった」「測りに行く作業がある」「夜間の補給判断ができない」「過剰在庫になっている」。超音波で液面・粉体面までの距離を測ります。
見えると 補給の判断が遠隔ででき、発注の自動化まで繋げられます。測りに行く作業そのものが無くなります。
機器 EM400-MUD(超音波距離)
A敷地境界の騒音
「近隣からクレームが来た」「騒音規制法の基準に対して余裕があるのか分からない」「夜間操業を制限されている」。境界と設備側で騒音レベルを時刻つきで記録します。
見えると 「いつ・どの設備か」が特定でき、クレーム対応が記録ベースになります。設備更新や防音工事の投資判断の根拠にもなります。
機器 WS302(騒音・温湿度)
振動による回転機の予兆保全について
ポンプ・ファン・減速機の振動による予兆保全は、ここに挙げた機器では対応できません(当社で取り扱う LoRaWAN センサーに適した機種がないため)。ご要望があれば別のメーカーを含めて選定しますので、現場の回転機の種類と台数をお知らせください。測る構成と機器
既設の設備・制御盤には手を入れません電池式のセンサーは両面テープかネジ留めだけで付きます。盤の中(電流センサー)と、産業用センサーを読む I/O コントローラだけ、電気工事士が施工します。無線は LoRaWAN なので工場 1 棟をゲートウェイ 1 台でカバーでき、Wi-Fi や社内 LAN を借りる必要がありません。
| 電力・電流 | CT101 / CT103(単相)、CT303 / CT305 / CT310(三相)。誘導給電式で電池交換が不要。分電盤・動力盤の系統ごとに取り付けます |
|---|---|
| 接点・パルス | EM300-DI。信号灯、シーケンサの接点、既存メータのパルス出力(ガス・水・蒸気)を拾います |
| 温度(高温・液中・配管) | EM500-PT100。電気炉・乾燥炉・薬液・配管の表面温度。熱電対やPt100 のプローブを選びます |
| 温湿度・空気質 | EM300-TH(屋内)、EM320-TH(屋外・結露環境)、AM307 / AM308(温湿度・CO2・E-ink 表示つき) |
| 漏水・残量・騒音 | EM300-SLD(スポット漏水)、EM400-MUD(超音波の距離=残量)、WS302(騒音) |
| 産業用センサーの読み口 | UC300。微差圧トランスミッタ、圧力トランスミッタ、黒球つき WBGT 計などの 4-20 mA / Modbus 出力を無線に載せます。盤が近ければ有線 Modbus + エッジでも構成できます |
| ゲートウェイ | UG65(LTE 版あり)。工場 1 棟に 1 台。社内 LAN を使わず LTE 回線で独立させる構成も選べます |
| ダッシュボード | 当社で構築します。しきい値・アラート・日報・CSV 出力まで含みます。既存の中央監視(BA)がある場合は、並行して置くか、将来つなぐかを設計で決めます |
このページに挙げた機器は、日本国内で使える技適取得済みのもの、または無線を持たない有線機器だけです。センサーと機器の一覧
進め方(3 ステップ)
Step 1 のデモ画面作成は無料よくある質問
工場の見える化についてどれから始めるのがいいですか
金額がいちばん大きく、現地調査がいちばん軽いのは圧縮空気のエア漏れです。無人の時間の消費電力を測るだけで、その日のうちに金額が出ます。法令対応を急いでいる場合は暑熱環境(WBGT)が先になります。どちらも Step 1 の現地調査で同時に測れるので、順番は測ってから決めるのが確実です。
既存の設備や制御盤に手を入れる必要はありますか
測って見える化する段階では必要ありません。センサーは後付けで、既設の空調・排気・PLC・中央監視には触りません。手を入れるのは、見えた結果を受けて「ファンをインバータ制御する」「台数制御を変える」と決めた場合だけです。
工場は電波が通りにくいと聞きますが、無線で届きますか
LoRaWAN は 920 MHz 帯で、Wi-Fi より回り込みに強く、鉄骨や壁をまたいでも届きやすい方式です。工場 1 棟はゲートウェイ 1 台でカバーできることが多く、金属の囲いの中など難しい場所は Step 1 の現地調査で電波を実測し、設置位置か中継で解決します。
社内 LAN や情報システム部門の承認が必要ですか
必要ない構成を選べます。ゲートウェイを LTE 回線で独立させれば、社内 LAN に一切触れずに運用できます。社内 LAN を使う場合は、通信先と使うポートを書いた資料をお出しして、情報システム部門の確認を受けてから進めます。
電池はどのくらい持ちますか
送信間隔 10 分の温湿度センサーで数年が目安です(間隔を短くすると大きく減ります)。電流センサーは誘導給電式で電池が不要です。I/O コントローラとゲートウェイは外部電源で動きます。交換が必要になる時期と費用は、構成を決める段階でお伝えします。
見えたあとの対策工事まで対応できますか
対応します。当社は設備制御(DALI・KNX)とセンサーの両方を扱っているため、計測から制御・工事までを 1 社で設計できます。運用の見直しだけで済む場合は、工事をせずにそれで終わりにします。
どのくらいで効果が分かりますか
スポット測定は現地で当日わかります。連続計測では、時間帯ごとの傾向が 1〜2 週間、外気温との相関と年間の損失額の算定が 1 か月ほどで安定します。運用の見直しの効果は、実施した翌日から同じ画面で確認できます。
1 拠点だけでなく、複数の工場をまとめて見られますか
見られます。工場ごとの画面と、本社がすべての工場を並べて比較する画面を分けて作ります。本社側では「デマンド目安に対する本日のピーク」「超過時間」などで並べ替え、どの工場から手を打つかを決められます。
御社の工場で、どれから測るべきか決めませんか
業種・工程・設備の種類(コンプレッサー、集塵機、炉、チラー)と、お困りの症状を教えていただければ、測点の置き方と機器構成、金額の出し方をお出しします。平面図とお困りごとをいただければ、御社の工場に合わせたデモ画面の作成は無料です。現地調査が必要な場合の費用は、規模と距離に応じて個別にご相談します。
